春から1年生を迎えるお子さま・保護者のための入学準備・生活サポートガイド

子どもに対し、イライラして怒鳴ってしまいます【後編】[教えて!親野先生]

今週の相談:小学1年生の学習態度について

小学1年生の娘に対して、完璧を求めてしまいます。宿題のマル付けを毎日するので、子どもがどのくらい勉強を理解しているかよく見えます。それが、前に終わっているはずの内容がわかっていなかったりすると、とてもイライラしてつい怒鳴ってしまいます。そして、課題が終わったあとも徹底的に追加の問題を出し、それがわからないと気が済まなくなります。頭では「今日こそは怒らずに」「勉強が嫌いにならないように」と毎日思っているのですが……。この子なりのペースや個性があるのだと頭ではわかっていても、「他の子はすらすらできているんじゃないか」と思うときつくあたってしまいます。習い事でも、友達に追い越されるのが嫌で厳しく教えてしまいます。私自身の勝手なエゴであることも、子どもによくないことも頭ではわかっていても、こんな自分をどうコントロールしていいかわからず悩んでいます。(そら さん)

親野先生のアドバイス

前回に引き続き、そらさんへのアドバイスです。

さて、長々と私の経験を書いてきました。
それは、そらさんの姿が私自身の姿とダブるからです。
そらさんは、「頭ではわかっていても、こんな自分をどうコントロールしていいかわからず、悩んでいます」と書いています。
これは、私とまったく同じです。
そして、多くの人の姿でもあります。

私の経験からはっきり言わせてもらいます。
なぜ、変えられないかというと、それは本当に心からわかっていないからなのです。

子どもへの影響

その行為のもたらす結果がどのようなものか、それがはっきりわかっていないからできないのです。

このまま子どもに対してイライラして叱ったり怒鳴ったり、自分自身の勝手なエゴで子どもによくないと頭でわかっていることをし続けていれば、その結果、どういうことになるのか?
それがはっきりわかっていないのです。

でも、このままいけば、本当につらく悲しい結果になる可能性は高いと私は思いますよ。
子どもが小さい時は、それほど結果が表れないのです。
小さい子どもは本当に無力で、親にすべてを頼らなくてはならないからです。
でも、子どもはいつまでも小さく無力でいるわけではありません。
成長して力がついてくるにつれて、結果が表れてくるのです。

それは必ず表れます。

親子関係をつくる日々の行動

今の毎日の生活の中で、親の一言一言、一つひとつの振る舞い、それらが親子関係をつくっているのです。
今の毎日の生活の中で、親が種をまいているのです。
子どもが種をまくのではなく、すべての種は親がまいているのです。
それがどんな種だったか?

いい親子関係をつくってきたのか?
愛情と信頼にあふれた人間関係をつくってきたのか?
それらのすべてがあらわになる時が、人生の中で必ずやってくるのです。
自分がまいた種を刈り取る時が必ずやってくるのです。

その時、そらさんには、私と同じつらく悲しい状況にならないでほしいと、心から願っています。
なぜかというと……。
私の経験は教師と子どもの関係です。
せいぜい1年か2年の関係です。
でも、これが親と子どもだったらどうでしょう?
まさに、一生に渡る関係なのです。
そして、一度壊れた信頼関係を取り戻すのは、本当に本当に難しいのです。

ところで、私は、先ほど「なぜ、変えられないかというと、それは本当に心からわかっていないからなのです。その行為のもたらす結果がどのようなものか、それがはっきりわかっていないからできないのです」と書きました。
私の場合は、子どもたちから完全なノーを突きつけられて初めてわかりました。つまり、結果が表れてからわかったのです。
でも、そらさんのような親子関係の場合、結果が表れてからわかるのでは、あまりにも遅すぎです。

それを、防ぐための方法が一つだけあります。
つまり、結果が表れる前にわかる方法が一つだけあるのです。それは、想像することです。
想像力は、あらゆる生き物の中で唯一人間だけに備わった能力です。
物事の結果を想像して行動することこそ、人間の人間たるゆえんです。それが賢さというものなのです。

この想像力を使って、今やっていることの結果をはっきり想像してください。私は、本当にそれをはっきり思い浮かべてほしいと思います。
今やっていることの結果は必ず自分に返ってきます。
それをはっきり想像してください。
結果に直面しなければ100%はわからなくても、想像力で95%はわかるということがあると思います。
今のそらさんのわかり方が50%だとしたら、それを想像力で限りなく100%に近付けてください。

もちろん、この他にもやってほしいことはいろいろあります。
自分のストレスを解消する、ママ達とおしゃべりする、カウンセラーに聞いてもらう、子どもと離れる時間を持つ、自分自身の楽しみや生きがいを持つ、一人だけで子育てを背負い込まない、子育ての助っ人を確保する、毎日子どもの寝顔を見て子育ての初心に返る、もっと小さい頃の写真を見て初心に返る、自分の気分に気付くようにする、怒りそうになったら子どもから離れる、深呼吸する、呼吸を意識して吸う息と吐く息を3倍の長さにする、などなどです。

これらもぜひやってください。
でも、それらのすべての土台として、自分を変えるという一大決心をしてください。もうイライラして叱りつけたり怒鳴りつけたりしない、という一大決心をしてください。

そのために必要なのが、結果をはっきり想像するということです。
本当の結果に直面してわかる前に、想像力でわかってください。
本当の結果に直面して嘆く前に、自分を変えてください。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
そらさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

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